介護の1ヶ月単位変形労働時間制、夜勤シフトの残業代トラブル防止法
介護施設は24時間365日体制のため、夜勤シフトはどうしても1日8時間を超えがちです。「変形労働時間制を入れているから残業代は出ない」と思い込んだまま運用していると、実は要件を満たしておらず、未払い残業代トラブルに発展するケースも少なくありません。今回は、夜勤のある介護事業所が知っておきたい「1ヶ月単位の変形労働時間制」の基本と、勤怠管理での実務対応を解説します。
なぜ介護の夜勤シフトは「残業代」でつまずくのか
労働基準法の原則は、1日8時間・週40時間(法定労働時間)です。これを超えて働かせると、原則として25%以上の割増賃金(残業代)の支払いが必要になります。
しかし、介護施設の夜勤は「16時間夜勤」「明け休み込みのロング勤務」など、1日の実労働時間が法定労働時間を大きく超える働き方が一般的です。何も対策をしなければ、この超過分はすべて時間外労働として割増賃金の対象になってしまいます。
ここで活用できるのが「1ヶ月単位の変形労働時間制」です。要件を満たして導入すれば、あらかじめ特定した所定労働時間の範囲内は、1日8時間・週40時間を超えても時間外労働にはなりません。逆に言えば、要件を満たさないまま「変形制だから」と残業代を支払わないでいると、それは制度の誤用であり、未払い賃金として是正勧告や遡及支払いのリスクを抱えることになります。
1ヶ月単位の変形労働時間制、導入の3つの要件
厚生労働省の解説によれば、1ヶ月単位の変形労働時間制(労働基準法32条の2)は、1か月以内の一定期間を平均して1週間あたりの労働時間が法定労働時間(40時間)を超えなければ、特定の日・週に法定労働時間を超えて働かせることができる制度です。
導入には主に次の3点が必要です。
- 就業規則または労使協定に定める:常時10人以上の労働者を使用する事業場は就業規則への規定と届出が必要です。労使協定で導入する場合も、所轄の労働基準監督署への届出が必要です。
- 各日・各週の労働時間をあらかじめ具体的に特定する:「繁忙期だから」といった曖昧な運用ではなく、シフト表の段階で各日の始業・終業時刻を明確に定めておく必要があります。
- 深夜割増・休日割増は別枠で発生する:変形労働時間制を導入していても、22時〜5時の深夜労働には25%以上の割増賃金が、法定休日の労働には35%以上の割増賃金が別途必要です。「変形制だから割増ゼロ」ではありません。
なお、常時10人未満の介護事業所は、業種によっては「特例措置対象事業場(保健衛生業など)」に該当し、週の労働時間の基準が44時間になる場合があります。該当するかどうかは所轄の労働基準監督署にご確認ください。
(出典:厚生労働省「変形労働時間制の概要」)
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1ヶ月単位の変形労働時間制を正しく運用する最大のハードルは、「各日・各週の労働時間をあらかじめ具体的に特定する」という条件を、毎月のシフト作成のたびにきちんと満たし続けることです。
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まとめ
夜勤シフトのある介護事業所にとって、1ヶ月単位の変形労働時間制は残業代を適正に管理するための有効な選択肢です。ただし、就業規則・労使協定での明確な定めと届出、各日・各週の労働時間の事前特定、深夜・休日割増の別枠管理という要件を満たして初めて効果を持ちます。制度を「入れているつもり」で終わらせず、シフト作成と勤怠実績の両方から運用を見直してみてください。
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