介護パートの副業・掛け持ち、労働時間通算の見直し議論と割増賃金の管理法
介護の現場では、パートや登録ヘルパーが他の事業所と掛け持ちで働くケースが珍しくありません。「うちで週20時間、ほかで週25時間働いているらしい」と分かったとき、残業代はどう考えればよいのか。悩んだ経験のある事務担当の方は多いはずです。
この掛け持ち(副業・兼業)の労働時間の扱いが、国の審議会で見直しの議題になっています。ただし、結論はまだ出ていません。この記事では、現行ルールと議論の現状を確認したうえで、事業所が今のうちにできる備えを整理します。
現行ルール:事業所が違っても労働時間は「通算」される
労働基準法38条では、事業場が異なっても労働時間を通算すると定められています。つまり、A事業所とB事業所で働く職員は、2か所の労働時間を合計して、1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えた分が時間外労働になります。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、副業先の労働時間は労働者本人の自己申告で把握する方法が示されています。後から契約した事業所のほうが、割増賃金(残業代)の支払い義務を負うのが基本的な整理です。
介護事業所で起きやすい困りごとは次のとおりです。
- 掛け持ち先の労働時間を、本人の申告に頼るしかない
- 申告が正確かどうか、事業所側では確かめられない
- 申告内容を毎月確認する事務の手間が増える
議論の現状:割増賃金の通算を外す方向で検討中(未確定)
厚生労働省の第205回労働政策審議会労働条件分科会 議事録(2025年11月18日)では、この通算の見直しが議題になりました。議事録には、中小企業では労働時間の通算が難しく副業の利用が進まないという声があることを踏まえ、割増賃金については通算管理の適用外とする方向での検討が必要だ、という趣旨の意見が示されています。一方で、健康確保の観点から通算を維持すべきだという意見も出ています。
大切なのは、現時点(2026年10月)では法改正として確定していないという点です。現行の通算ルールは今も有効です。「通算しなくてよくなる」と決めつけて運用を緩めると、未払い残業代のリスクが生じます。見直しの行方は、厚労省の審議会資料で継続的に確認してください。
今のうちに事業所でできる3つの備え
制度がどう決まっても、次の3点は役に立ちます。
1. 掛け持ちの有無を把握する
採用時や契約更新時に、他事業所での勤務の有無と、おおよその週労働時間を届け出てもらうルールにします。届出の様式と更新のタイミングを決めておくだけで、後からの確認が楽になります。
2. 自事業所の労働時間を正確に記録する
通算の議論がどう進んでも、自事業所の労働時間を客観的に記録することが土台になります。打刻を15分単位で丸めたり、自己申告に頼ったりしていると、通算の計算以前に記録の信頼性が揺らぎます。
3. シフトの段階で週の労働時間を確認する
掛け持ちの職員は、自事業所の勤務を増やすと週40時間を超える可能性があります。事後に気づくのではなく、シフトを組む時点で見えるようにしておくと、突発的な残業代の発生を防げます。
絆太郎でできること
絆太郎は、介護現場を運営する会社が自分たちの事業所のために作った勤怠・シフト管理システムです。この課題に関しては、自事業所側の記録と管理を楽にします。
- LINE打刻:職員が普段使うLINEで出退勤を記録でき、打刻の記録が残ります。打刻エラーはコックピットで検知できます。
- AIシフト自動生成:配置基準、希望休、夜勤・連続勤務の制限を考慮してシフトを作成します。
- コックピット:出勤状況、打刻エラー、承認待ち、有給消化率を一画面で確認できます。
掛け持ち先の労働時間そのものを自動で取得する機能はありません。その部分は、本人からの届出と申告を前提にした運用が必要です。そのうえで、自事業所の労働時間を正確に記録しておけば、通算が必要な場面でも根拠を示せます。
まとめ
- 現行ルールでは、掛け持ち職員の労働時間は事業所をまたいで通算して判断する
- 割増賃金の通算を外す方向の議論はあるが、確定していない(出典:厚労省 第205回労働条件分科会 議事録)
- 備えは「届出ルール」「自事業所の正確な記録」「シフト時点の確認」の3点
制度の行方を待つ間にも、記録とシフト運用を整えておけば、どの結論になっても慌てずに済みます。
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